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2011/12/20 「有頂天家族」 森見登美彦 幻冬舎

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

京都を舞台に狸の家族と、人間と天狗のお話し。
いくつか騒動があり、その日常が書かれている。家族の絆を様々な騒動を通じて伝えている。狸が主人公と言うこともありかなり面白いファンタジーである。

狸の4兄弟がとても個性的で共感が持てる。主人公は三男の矢三郎であり彼の主観で物語が進行していくが、その狸なりの世界観も新鮮でほっこりとしていて面白かった。
狸なりの視点で書かれていることから、世の中の矛盾とか変な点など様々なことについて改めて気づかされる。人間の矛盾だったり、何て無意味なことを繰り返しているのだろう?とか思わされたり。



この物語の主題は「家族の絆」。何回もウルッとしてしまった。

4人の子供たちに注がれる母狸の深くて広い愛や、亡き父を思い出す子狸たちの想いや、目を移して人間や天狗に注目してみてもとても暖かく、寂しい一人暮らしをしている我が身を柔らかく包んでくれた。

先にファンタジーと書いたが、本当にやわらかい世界で読書中はどっぷりこの世界に入り込むことができ、十分に堪能できた。
もう一度この世界に入り込んで狸たちの日常を覗き見してみたいが、シリーズものでもないしそれはできずちょっと寂しい。でもきっと今でも彼らは相変わらず「面白きことは良きことなり!」を合言葉に京の街を駆け抜けているに違いない。

その中にちょっとでも仲間に入れて欲しい気持ちもあるが、自分は人間なのでそれはかなわない。

長編だったが一気に読めた。そして正直言うと母狸の言葉や父の思い出のシーンでは図書館にいたにもかかわらず、泣いてしまいました。

そんなお話です。また読みたい!