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2012/1/16 「坊ちゃん」 夏目漱石 新潮文庫

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

実家に帰り、久々に読みたくなり、違う本を読んでいたにもかかわらず読み始めてしまった。

冒頭のかなり有名な一文、「親譲りの無鉄砲で、子共の時から損ばかりしている・・・」はいつ読んでも「これから坊ちゃんの世界に入るのだなぁ」、となぜか感慨に浸ってしまう。

物語の内容としては、特に大事件があるわけでもなく、主人公が大活躍するわけでもないのに、ほんの短い間に坊ちゃん自身や坊ちゃんの周りで巻き起こる出来事を、坊ちゃん目線の痛快な語り口調がとても心地よい。

そして四国の田舎の風情や、その当時の日本の状況が随所で語られ、それが鮮明に頭の中に浮かんでくるようで、何度読んでも常に当時の日本の“よさ”が伝わってくる。

坊ちゃん目線の語り口調も毒々しいが別に憎さも無く、読んでいてとても痛快な気持ちになる。赤シャツや、野だ、校長のたぬきや、山嵐、うらなり君など、他にも田舎の人間に対する都会っ子の上から目線や、小ばかにしたような語り口調。それでも坊ちゃんはやはり坊ちゃんなのだなということが伝わってくる。彼の時々見せるあまり頭の良くなさそうな言動なんかもとても共感が持てる。

そしてこの話は昔の、帝国としてまだ産まれたばかりの日本の姿も読み取れる。小さな島国が世界を相手にしているという日本人の誇り、地元に対する愛情など、坊ちゃん自身は意識していないのかもしれないが、現代を生きる人々とは違った想いで自分の国、日本のことを考えているのだろう。時代背景などの違いも読み取ることが出来るが(師範学校が出てきたり、祝勝会が行われていたり)、その時の人々の言動、その街の様子などを読み取って、感じることがこの「坊ちゃん」の魅力なのかもしれない。

とりあえず、坊ちゃんの口の悪さは読んでいてとても快感だった!